『アイアン・ジャイアント』の感想回(後編)を各Podcastプラットフォーム上で公開しました。
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良いものを作れば結果はおのずとついてくるという幻想
はい、ギリィです。
今回は放送回に合わせてこの映画のメイキング部分に触れた内容を書いていこうかなと。
いきなり暗い見出しですね。しゃーない。
メイキング動画『ジャイアントの夢』ではこの作品がいかに不十分な体制の中で作ることを強いられたか、その状況に日和らずがむしゃらに完成へとこぎつけたかが描かれていましたね。
素人集団では完成できないから、「腕は立つけど人格に問題があってどこのスタジオも雇ってくれないプロ」を積極的に引き抜いて監督の強固な意志とカリスマで何とか『制作チーム』として成り立たせた。
監督自身もアニメへの情熱と才能が溢れるあまり、当時の「ぬるい」ディズニーを保身を考えず考えず批判しクビに。その反骨心を糧にこの作品を作り上げた。「おとぎ話はディズニーにやらせておけ」「俺たちはその先を行く」と制作中檄を飛ばしていた。なお、優秀な人材はすべてディズニーに取られていた。
配給元のワーナーブラザーズはアニメ作品による立て続けの失敗から、利益獲得を半ばあきらめており、予算が全く下りなかった。
……と。少し思い出して書くだけで、かなりの悪条件だったことがわかる内容でした。このような中で作られていながら奇跡的に良作になった本作。しかし、興行収入は振るわず。
原因は宣伝費不足。公開初日、きらびやかな広告がホールを飾る中、本作はチケット売り場のパネルに “Iron Giant” と書いた紙だけが貼られていたというのはあまりにひどい話です。
このメイキングを見るまで、自分はどこか幻想を抱いていたと思います。それは「いいものを作ればおのずと結果がついてくる」というような。
でもそうじゃねぇんだななあ。
いいものと分かってもらうためにはまず知ってもらわなければならない。認知してもらわなければ始まらない。だって劇場に行けば映画はたくさんあるから。
宣伝の力の大きさを無情な形で知れるいいメイキングでした。
でもこうも思います。映画にとっての結果とは成功とは興行収入だけなのかと。その視点に限定して言えばこの映画は間違いなく失敗だったと思います。
しかし、盛大にこけた昔の映画が時を越えてブルーレイになり、口コミでいまだに「良作」と語られ続けている。
泡沫のように消えてしまうのではなく人々の記憶の中に鉄の巨人と少年が残っているのならば、それも一つの成功と言っていいんじゃないかなあ、と私は思います。
興行的に成功した超大作としての鮮烈な輝きはなくても、鈍く光り続ける鉄のような輝きがあると思うから。知る人ぞ知る、みたいな。ファンからの愛にあふれる地位を確立できたのはおいしいとすら思うから。
知っている人から知らない人に愛にあふれた言葉で本作は薦められていく。そして新たに見た人がこの作品の良さを発見していく。このループが本作を不朽の名作にしていくんですね。当Podcastがそのループの一つを担えたのならば、こんなにうれしいことはありません。
本当に素晴らしい映画でした。
……でまあそれはそれとしてね、俺としてはこのラジオの宣伝を電通あたりに盛大にやってもらって巨万の富を築きたいんだけどさ。さじえもん、なんかいい道具ない?
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